「地面師たち」は、主に積水ハウス地面師詐欺事件を基に描かれています。
実際の事件とドラマとの相違点をまとめてみました。
ドラマ「地面師たち」と積水ハウス地面師詐欺事件との比較
首謀者
積水ハウス事件(実話)
内田マイク⇒逮捕済み
「地面師たち」(ドラマ)
ハリソン山中⇒おそらく海外逃亡
舞台となった物件と所有者
積水ハウス事件(実話)
五反田の旅館「海喜」で所有者は海老澤佐妃子。
「地面師たち」(ドラマ)
高輪の光庵寺に隣接する駐車場で所有者は川井菜摘。
土地の売却意思
積水ハウス事件(実話)
不動産業界では有名な物件だったそうで、たくさんの不動産業者が地主に接触を試みていましたが、地主には全く売却の意思がなかったようです。旅館を廃業したのも、不動産業者が客を装って宿泊し、地主と接点を持とうとしたことが煩わしくなったためと言われています。
「地面師たち」(ドラマ)
実話同様、地主の川井住職に土地を売る意思は全くありませんでした。
売却ターゲット
積水ハウス事件(実話)
犯人の地面師グループが旅館(海喜館)の売却話を持ち掛けたのは積水ハウスだけではありません。積水ハウスの前に複数の会社と売却交渉をしていますが、いずれも不審に思われて交渉中止になっています。しかし、皮肉にもそれが偽地主には良い練習となり、積水ハウスとの打ち合わせの席では地主としての振る舞いも手馴れたものだったようです。
「地面師たち」(ドラマ)
ドラマでは光庵寺駐車場の売却話は石洋ハウスのみしか描かれていません。
中間業者
積水ハウス事件(実話)
社名は(株)IKUTA HOLDINGS (経営者は生田剛)。書類上ではアパレル系で多角経営とのことでしたが、その後、生田側の希望で契約当事者がIKUTA HOLDINGS(株)というペーパーカンパニーへ変更になります。
偽地主がIKUTA(株)に60億円で売却し、IKUTA(株)が積水ハウスに70億円で売却するという流れです。
「地面師たち」(ドラマ)
ABIRUホールディングス(経営者は阿比留剛)。こちらもアパレル系から成り上がり事業多角化に成功という設定。
偽地主の川井菜摘からABIRUホールディングスを経由して石洋ハウスに112億円で売却、ABIRUホールディングスの取り分はそのうち10億円という内容でした。
中間業者の取締役
積水ハウス事件(実話)
(株)IKUTA HOLDINGS から変更となったIKUTA HOLDINGS (株)はペーパーカンパニーで、女性二人が取締役として名を連ねています。そしてそのうちの一人、小林明子氏の夫は元代議士ということです。代議士の名前はわかりませんが、小林明子という名前をキーワードに検索していくと小林興起氏の名前がヒットします。ちなみに、小林興起氏の奥さんを検索すると、奈良明子という名前がヒットします。小林明子と奈良明子、同一人物らしいのですが、どういう経緯で苗字が変わったのかはわかりません。
「地面師たち」(ドラマ)
ABIRUホールディングスについて拓海が調べるシーンで、ABIRUの相談役として城田美千代という名前が映しだされます。後藤は城田について「苗字はちゃうけど夫が自民党議員らしいで」と語っているので、夫が代議士というだけでなく、苗字が違うところまで実話に寄せた設定になっているようです。
交渉の場にいたのは?
積水ハウス事件(実話)
地面師グループで積水ハウス側が直接会ったのは2人と言われています。偽の地主と交渉役の2人です。
「地面師たち」(ドラマ)
「地面師たち」ではなりすましの麗子、交渉役の拓海、法律の後藤の3人が交渉の場に臨みました。
不動産ブローカーの存在
積水ハウス事件(実話)
地面師グループとIKUTAホールディングスの生田をつないだ不動産ブローカーがいるとされています。
「地面師たち」(ドラマ)
後藤から相談を受けた地上げ屋の林が阿比留を紹介して両者をつなげています。
本人確認
積水ハウス事件(実話)
実話では、公証役場で地主の本人確認が行われています。 公証役場の本人確認証は、登記済権利証の代用にもなり、一般的に信用性の高いものとされています。積水ハウスもこの点を高く評価して偽の地主を本物だと確信することになりました。
「地面師たち」(ドラマ)
ドラマでは、各種書類の確認と簡単な質問、その後に光庵寺境内を案内するという描写がされていました。
怪しい挙動
積水ハウス事件(実話)
契約前の最終打ち合わせで、偽地主は自分の住所や干支を間違えるというハプニングが起こっています。
「地面師たち」(ドラマ)
ドラマでは石洋ハウスの「寺の創建は何年ですか」という本人確認のための質問に麗子が即答できず拓海にフォローされるというシーンが描かれています。
契約を急かせる
積水ハウス事件(実話)
地面師は、「地主は3億円のマンション購入を予定していて売却を急いでいる」と積水ハウスに伝えて契約を急がせています。
「地面師たち」(ドラマ)
ドラマでも、拓海が「売主は売却を急いでいます。」として、青柳達に契約を急ぐよう伝えるシーンがあります。
怪文書
積水ハウス事件(実話)
本物件の売買契約を終えた直後、積水ハウスに海老澤佐妃子名で文書が届きます。そこには、地主として売買契約を締結してないこと・仮登記の印鑑は偽造されていること・地主当人は面会謝絶の入院中で契約に臨める状態にないこと・仮登記の抹消をしてほしいことなどが記されていました。これにより、積水ハウスでは地主の本人性の確認を行う方針がきまります。
「地面師たち」(ドラマ)
「地面師たち」では、文書が石洋ハウスの青柳の元に届きます。内容も実話同様にあなたたちは騙されていますよという内容でした。しかし、麗子扮する偽地主の涙の説明により、青柳たちは麗子を本物の地主と信じてしまいます。
内覧の実施
積水ハウス事件(実話)
怪文書を受けて、内覧が実施されました。時間は1時間で建物内部を隈なく見て回ったとされています。
「地面師たち」(ドラマ)
本人確認の一貫としてお寺の中を地主に扮した麗子が案内します。
地主を知る人物への本人確認
積水ハウス事件(実話)
怪文書を受けて近隣住民や仕事関係など、地主と面識のある人たちに写真を見せて本人確認を行うことも検討されましたが、地主本人の不興を買って契約が流れることを恐れ、当初は実行されませんでした。しかし、決済後、地主の弟を名乗る人物の登場により近隣住民への聞き取りを実施。しかし、本人だという人、本人ではないという人いろいろで、決定的な判断には至りませんでした。
「地面師たち」(ドラマ)
実話同様に、本人の不興を買うことを恐れて躊躇しているうちに契約がまとめり、結局行われませんでした。
小切手による支払い
積水ハウス事件(実話)
手付金14億円のうちの12億円と、残金49億円を預金小切手で支払っています。
「地面師たち」(ドラマ)
売買代金112億円が4枚の小切手で支払われるシーンがあります。
現地に警察がやってくる~露見
積水ハウス事件(実話)
決済日当日、既に他界していた海老澤の弟の弁護士の通報により、測量のために物件内部に入ろうとした積水ハウス社員が警察に任意同行されてしまいます。積水ハウスの責任者が警察に出向くと、地主の海老澤佐妃子の弟を名乗る男性が2人と弁護士がいて、怪文書に書いてあったことと同じことを告げられます。
その後、本人確認を行うために偽地主との面会を設定するも、偽地主は約束の日時に現れず。そして同じ日に登記申請却下の連絡が来て詐欺が露見しました。
「地面師たち」(ドラマ)
契約後、現地の測量が開始されたのをきっかけに、事態を知らなかった川井住職の通報により警察沙汰になります。石洋ハウスには登記申請却下の連絡が入り、地面師詐欺が露見します。
実話がかなり盛り込まれている
以上、「地面師たち」と積水ハウス事件のエピソードをピックアップしてみましたが、こうしてみると思っていた以上に実話のエピソードを盛り込んだ映画だということがわかりますね。
実際の積水ハウス事件では地面師たちは逮捕されてしまいましたが、ドラマではハリソンは逃亡に成功しています。小説では続編が出ていますから、そちらのドラマ化もしてほしいですね。でも続編となって時点で実話ではなくなりますね。
「地面師たち」原作本はこちら。
地面師たち (集英社) 新庄 耕(著) 文庫 814円 |
地面師の実話はこちら。
地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団 森 功(著) 文庫 726円 なお、audlible版だと0円で視聴可能です。 |