「主よもう一人助けさせて」
「お願いです、もう一人」
何の気なしに、特に目的もなく、Huluのおすすめに表示されてたので見始めたんですが、引き込まれてしまいました。
そして最後は感動。
映画で感動したのは久しぶりです。
主人公はデズモンド・ドス。実在の人物です。
端的にこの人の特徴を話すと
戦場で銃を持つことなく多くの負傷兵を助けた勇敢な人
ということになります。
兵士になったのに「銃はもてません。」「人は殺せません。」ということで"臆病者"とバカにされますが、いえいえそれはとんでもない誤りで、まれにみる勇気と実行力を持った人でした、、、というお話です。
ハクソーリッジのあらすじ~ネタバレあるよ
ハクソーリッジのあらすじを大まかにまとめるとこんな感じ
- 少年時代に兄弟げんかで弟に傷を負わせて顔面蒼白
- 妻ドロシーと出会って一目ぼれ
- 軍に志願するも「銃は持ちません」
- パパの助け舟で軍法会議を切り抜ける
- 沖縄へ
- ハクソーリッジで大苦戦
- 米軍退却!しかしデズモンドは・・・
もう少し細かく書くとこんな感じ。もちろんネタバレ。
少年時代に兄弟げんかで弟に傷を負わせて顔面蒼白
主人公デズモンドは4人家族。
パパはトーマス・ドス、通称トムって呼ばれてます。
ママはバーサ・ドス。
弟はハロルド・ドス、通称ハルって呼ばれてます。
4人暮らしです。
ドス兄弟は野山を駆け回る活発な少年ではあるものの、映画の中では
「ちっ!またドスのところのクソガキだ」
みたいなセリフがあるので、ご近所周りの評判はイマイチだったのかもしれません。
その大きな理由と思われるのが父のトーマス(通称トム)。
トムは若かりし頃に戦争に行き、心に深い深い傷を負ってしまっていたのでした。戦争怖いね
そのせいで、トムは自分嫌いで自暴自棄。子供や嫁さんにつらく当たるめんどくさそーなオヤジです。。
映画の中盤でデズモンドが懐述しますが、
「オヤジに殴られて育った」
ということなので虐待オヤジの側面もあったようです。
デズモンドとハロルド(通称ハル)が家の庭で取っ組み合いのけんかをしていてもトムパパは傍観するのみ。
というか
「右手でガードするんだ!デズモンド!」
とケンカ指南のようなことをしています。
しかしそのケンカがヒートアップ。
頭に血が上ったデズモンドは、その辺にあったブロックでハルの頭部を殴りつけてしまいます。
意識を失うハル。
さすがに焦ったトムパパはハルを抱きかかえバーサママとともにハルを介抱します。
大事には至らなかったものの、自分のしでかしたことに顔面蒼白、ビビりまくっているデズモンド少年にバーサママは優しく諭します。
「殺人は重い罪。人の命を奪う事以上に重い罪はないのよ。」
このあたりが、のちの「敵であっても殺さない」というデズモンドの信念の伏線になってるようです。
妻ドロシーとの出会い。一目ぼれ。
大人になったデズモンドは、大けがをした青年を助けて病院に運び込みます。
その時、病院にいたのが超絶美人のドロシー。
デズモンド君、ドロシーを見た瞬間からわかりやすい一目ぼれ状態になります。
すぐにドロシーのところに行き、あれこれ話しかけ、次の日も病院に押しかけてアタックし、デート。
一目ぼれのデズモンドはデートでも押しまくって二人は恋仲になっていきます。
このあたりの彼の行動を見ても、決して臆病者とは思えません。
軍に志願するも「銃は持ちません」
そんなデズモンド、軍に志願すると言い出します。
少し前には弟のハルも志願して軍に入隊しています。
戦争で辛い過去を持つトムパパは反対しますが、デズモンドも衛生兵になって国のために働きたいとひかず、軍入りを決めます。
念願かなって軍に入り、陸軍に配属されたデズモンド。
しかし
彼が配属されたのはライフル隊。完全に想定外の配属先でした。
普通の人なら仕方ないと訓練を受け入れるか、思ったのと違うといって辞めるところですが、彼は辞めません。
なんと、ライフル隊に所属していながら、銃の訓練を拒否します。
上官のハウエル軍曹もそのまた上官のグローヴァー大尉もデズモンドを説得しますが彼は銃を持ちません。
兵士仲間からも冷たい目が向けられ、殴る蹴るの暴行も受けますが、頑として信条を曲げません。
さりとて、軍もデズモンドをそのまま放置するわけにもいきません。
規律が乱れれば他の兵士の命にも関わってくるかもしれないからです。
かくして、デズモンドは軍法会議にかけられます。
上官の命令違反というのが理由です。
トムパパの助け舟で軍法会議を切り抜ける
軍法会議ではデズモンドが圧倒的に不利でした。
下手したら刑務所行きです。
しかし、軍法会議にかけられることを知ったトムパパが、かつて軍にいたときの上官であるマスグローブ准将にかけあい、
「良心的兵役拒否の権利は議会法で認められておりいかなる場合も行使できる。」
と書かれた手紙を軍法会議に提出。
デズモンドを訴えた上官たちも、准将からの手紙を受けて訴えを取り下げます。まさに鶴の一声。
こうしてデズモンドは衛生兵として軍に残ることになりました。
沖縄へ
1945年5月。デズモンド達は沖縄に送られます。
激戦地ハクソーリッジ。日本名では前田高地というそうです。断崖の上で日本軍と米軍の激戦が繰り広げられており、米軍が苦戦に苦戦を重ねている要所です。
デズモンドたちがそこを訪れた際も、先にハクソーリッジに攻め入った先発隊が日本軍によって壊滅させられていました。
「ハクソーか。6回登って6回撃退された。」
「6回目に師団が壊滅した。」
ハクソーリッジで大苦戦
デズモンド達がハクソーリッジを登ると、そこで散っていった両軍兵士の生々しい死体があちこちに散乱。そのグロさから両軍の激しい戦いが容易に想像できます。
デズモンドの所属する隊も警戒しつつ前進をしていきますが、待ち構えていたかのように日本軍が一斉攻撃を仕掛けてきます。
雨のように降り注ぐ銃弾と爆弾で次々と命を落としていく仲間たち。
ひぇ~って感じです。あの状況では生き残るかどうかは運でしかない。
デズモンドはそんな中にあって、銃も持たずにひたすら負傷した仲間の手当てをして回ります。
「もう大丈夫だ。」
「何も問題ない。助かるぞ。」
なんの確証もない中、デズモンドは仲間たちを励まし続けます。
米軍退却!しかしデズモンドは・・・
日が暮れて一旦戦闘は収まったものの、朝になるとまた日本軍の激しい攻撃が始まりました。
「うぉぉおおおーーーっ!!」
雄たけびとも怒号ともとれる大声を上げながら地下壕から続々と出てくる日本兵。
米軍は待ち構えて銃撃をしますが日本兵はひるみません。先頭の兵が倒れてもその次の者が、次の者が倒れたらさらにその次の者がひるむことなく突進してきます。
日本軍の捨て身の攻撃に完全に圧倒されてしまう米軍。
グローヴァー大尉は海上の戦艦から自分たちのいる位置を砲撃するように依頼し、全員に退却命令を出します。
「戦艦から砲撃させる」
「退却だ!急げ!」
自軍の砲撃と日本兵の銃撃の板挟み状態の中、続々と断崖を降りていく米兵たち。
しかし
デズモンドは崖を降りませんでした。
「衛生兵!助けてくれ!」
と叫ぶ仲間がまだ崖上にたくさんいたからです。
さぁ、ここからがクライマックス。
一人、また一人とデズモンドは負傷した仲間たちを救出していきます。
その様子はそれはそれは感動的でした。
ハクソーリッジの名言や印象的なセリフなど
デズモンド・ドス
「何か間違ってるよ
人を殺したくないと犯罪者だなんて」
デズモンド・ドス
「信念を曲げたら僕は生きていけない。
君の誇れる男じゃなくなる。」
デズモンド・ドス
「衛生兵として戦いたいと思いました。
皆は殺すが私は助けたい。
人と人が殺し合う中で一人くらい助ける者がいてもいい。」
シェクター
「ハクソーか。6回登って6回撃退された」
先発隊の生き残り
「敵は必死だ。。。想像以上だ。」
「奴らは死を恐れない。狙われたら最後だ。」
「絶対にあきらめない。絶対に。。。」
デズモンド・ドス
「主よもう一人助けさせて・・・」
「お願いです、もう一人・・・」
グローヴァー大尉
「痩せっぽちのガキだと思っていたが誰にもできないことをやり遂げたな。」
「人生最悪の勘違いだった。俺を許してほしい。」
いちゃもんもあるよ
いちゃもん
日本軍はロープをはよ外せよ。。。
ハクソーリッジの戦場は断崖絶壁を登った崖の上にあります。
米軍はその絶壁を登るためにマス目状に編んだ太いロープをかけています。
デズモンド達もそのロープをつたってよじ登っていくわけですが、ここで疑問。
「そのロープ、日本軍はなんでさっさと取り払わないの?」
ハクソーリッジの戦いは何日にもわたって繰り広げられています。
浦添市のホームページによると、戦闘期間は16日間にも及んだそうです。
夜は休戦状態になるわけですから、日本軍がその気になれば毎夜ロープを切り捨てることもできたはずです。
ロープを外されると米軍はロープをかけるところから頑張らないといけないわけで、これは結構な負担になるはずなんですけど・・・。
いちゃもん
帰還してドロシーと再会するところまで描いてよ
デズモンドとドロシーはデズモンドが衛生兵としての訓練を受けている最中に結婚し、戦場に送り出されます。
衛生兵とはいえ、銃も持たずに戦場に赴く夫にドロシーは
「必ず私の元に帰ってきて」
と言って送り出します。結婚したばかりのドロシーの不安たるや相当なものだったはず。
それならやっぱりドロシーの元に帰ってドロシーが喜ぶシーンも見てみたかったですね。
いちゃもんです
デズモンドを助けろよ
この映画最大の見どころはデズモンドがたった一人で負傷した兵たちを救出していくシーンです。
一人ずつ崖のところまで運んではロープを使って降ろしていくんですが、崖下にはなんと他の米兵がいるんですよ。何人も。
ロープをよじ登ればいくらでもデズモンドを助けられるのに、他の米兵たちは下でデズモンドが負傷兵を降ろしてくるのを待ってる。
いやいや、お前たちも上に登ってデズモンドを手伝わんかい!
ハクソーリッジを見た感想~見どころとか
ちょっと試しに見てみるかという軽いノリだったはずなのに、気づいたら全部見てしまってました。
なんでこんないとも簡単に引き込まれたのかなと思い返してみたんですが、それなりに理由はありました。
まず、トムパパ(トーマス・ドス)を演じるヒューゴ・ウィーヴィングの怪演。ヒューゴ・ウィーヴィングは、マトリックスでキアヌリーブスの宿敵を演じた人です。思えばあの役も怪演でした。
トムパパは見るからにクセのありそうなオヤジ。世捨て人的なオヤジ。昼間から酒浸りで、息子たちが取っ組み合いのけんかをしていても止めもせず。奥さんのバーサにも辛く当たってます。
なんなんだ、このオヤジは!?
と思いつつ見てると、あっという間にデズモンドは好青年になっていてドロシーと出会います。そして看護師のドロシーがキレイのなんの。
ドロシーはなんてきれいなんだ
と、次の興味がドロシーに移る。
するとまたまたあっという間にデズモンドが軍に入り、「銃は持てません!」なんて言い出す。
だったらなんで軍に入ったんだ!
と心の中でツッコミ入れているうちに軍法会議にかけられ、
あれ~?デズモンドどうなっちゃうの~?
みたいな(笑
ここまでくるとすっかり見る気マンマンです。
でもまぁ、やっぱりドロシーの力が大きいかな(笑
後半はこの映画の見どころが満載です。
まずは戦場シーン。
本当の戦場ってこんな感じだったのかなと思わせるようなリアル感あふれる描写の連続です。グロいってことで話題にもなってるみたいですが、ウォーキングデッドを見たばかりの私にはさほどのことはありませんでした。
ま、人に聞かれれば
グロいよ
とは答えますけど。
そして、ラストのデズモンドが負傷兵を助け続けるシーン。
生き残りの米兵を掃討しようとする日本兵が迫りくる中で、デズモンドはたった一人で米兵を一人、また一人と救出していきます。
できますか?そんなこと?
見つかれば問答無用で殺される状況の中で、たった一人で日本兵の目をかいくぐってまだ息のある米兵を探し、応急処置をし、崖まで運んでさらにロープを使って崖の下まで降ろしていくんですよ?
たった一人で。さらに驚くことに彼は日本兵まで助けます。他の兵士とは明らかに違った目線で戦闘に参加していることがわかります。
デズモンドの救出劇は日本兵がひいた夜になっても続きます。
「主よもう一人助けさせて」
と独り言を言いながら、デズモンドは一人、また一人と黙々と救出していきます。
その数なんと75人!
ちなみに、デズモンドの隊が昼に退却した際、無事に崖下まで退却できたのはたったの32人です。
ちょっとすごいですね。もっとも、この75人っていう数字は確かな数字ではなく、実際のところは55人~100人の間なんだそうです。
・・・。
場合によっては増えとるやないかいっ!
とにかく、見ごたえある映画でした。
観てないならおすすめします。