12月3日(火)
《痩せた。》
《半月で4キロ。》
《じわじわ痩せながら私は知った。》
《人生はどん底から絶頂、絶頂からどん底の繰り返しだ。》
<回想:編集部>
ケイト
「遅れてすみません。でも徹夜でスクープ撮りました。」
《3週間前、スクープを取って絶好調だったあの日・・・。》
「アブラガニの写真撮りました~。」
<回想:病院>
浅井
「ケイトさん!くも膜下出血だそうです。」
杏南
「けいちゃんのお父さんは、、、キアヌリーブス・・・。」
ケイト
《奇妙なことを言い残して母は死んだ。》
<回想:自宅>
《シングルマザーだった母に父のことを聞いたことはなかったけど、キアヌリーブスの子ってのは悪くない。》
尾高
「いい話じゃないか、信じろよ。」
ケイト
「いい話なの?」
尾高
「いい話だよ。"マトリックス"だぜ!」
《ところが後日、母の遺品の中から指輪が出てきた。》
<回想:宝石店>
店員
「指輪のご注文主はノトアトオル様でございます。」
ケイト
「ノトアトオル?」
<回想:茶道教室前~編集部>
《30年前、世間を騒がせた殺人犯》
《キアヌリーブスの子ではなく殺人犯の子?》
<回想:自宅>
ケイト
「私が殺人犯の子供でも結婚できる?」
春樹
「できるよ。」
《どん底から幸せの絶頂に舞い上がった》
<回想:電車>
《そして再びスクープ!》
《愛って偉大!》
<回想:自宅>
春樹
「ごめんなさい。結婚の話はなかったことにしてください。」
「お父さんが誰でも関係ないとは思うんだけど、子供とかできた時のことを考えると、その遺伝子どうすんだって思っちゃう自分がいて・・・。」
「聞いた話は誰にも言いません。」
ケイト
「・・・。」
<回想シーン終わり>
《殺人犯の子。この逆境をどうやって私はどうやって跳ね返すんだよ。》
ケイト
「とりあえず会社行こ。」
<カフェ前>
ケイト
「飲んでかない?・・・5分だけ。」
<カフェ店内>
ケイト
「ん?冷めちゃった。新しいのにしよ。」
春樹
「いいです。。。用事って何ですか。」
ケイト
「私が乃十阿徹の娘かもしれないっていう話なんだけど、、、」
「キアヌの子であるという確証もないのと同じように、乃十阿徹の子であるという確証もないのね。」
「プロポーズされた時、"殺人犯の子でもいいの?"なんて思わず言っちゃった私が間違ってた。それでハル君の頭の中も固まっちゃったんでしょ?」
「でもね、まったく確証はないの。」
「あ、、、あるかもしれない可能性はなくもないけど、全くないかもしれないの!」
「あ、今わかってんの、これね。。。待って。。。」
「1985年、乃十阿徹から母は指輪をもらう。」
「1986年、キアヌと母はロスで会ってる。」
「1987年、私が生まれる。」
「だから、私の父が誰だかなんて、今あるデータではわかんないの。」
「つまり私は殺人犯の子と決まったわけではありません。」
「ん~、別れると結論づけるには早いんじゃないかな?」
「撤回しない?・・・撤回してください。」
春樹
「できません。一度言ったことは言ったことなんで・・・。すみません。」
ケイト
「自分で言うのもなんだけど、もったいなくない?私のこと。」
春樹
「僕なりに考え抜いたことなんです。」
ケイト
「だってまだ決まったわけじゃないんだからさ。」
春樹
「編集部ではこれからも今まで通りよろしくお願いします。」
ケイト
「はぁ・・・」
<編集部>
木嶋
「どこ行っちゃったかな。。。ここかな・・・」
鮫島デスク
「おっ、それ裁判所からの呼び出し状」
木嶋
「いや、こんなとこ捨てとかないでくださいよ」
春樹
「おはようございます。」
東山
「おはよう。」
岩谷編集長
「元巨乳セクシーグラドル、キューティ柏原!懐かしいねぇ!」
田淵デスク
「尾高の仕事にハズレはないですね。」
「おお、尾高!編集長、今週も絶賛だよ。」
岩谷編集長
「こんなんやってないで戻ってこいよ、おい。」
田淵
「こんなんはないでしょう。岩谷さんが作ったページなのに。」
岩谷
「尾高のためにな。」
尾高
「もう俺ニュース追う体力ないですから。
岩谷
「クマを追う体力あるくせに。」
尾高
「クマじゃないんです。ムースです。」
岩谷
「知らないよ、そんな動物は。」
田淵
「尾高の奥さんはほら、イルカと泳ぐ人ですから。」
岩谷
「影響されちゃったんだな。女の力ってすごいね~。」
尾高
「ちょっと岩谷さん。」
「こちらのおっぱい、一度切除して再建したものになります。」
岩谷
「えっ?」
田淵
「3年前DNA検査で乳がんのリスクがものすごく高いことがわかって予防的におっぱい両方切除しちゃったそうなんです。」
岩谷
「見事に再建できるもんなんだなぁ。」
市川
「ブチさーん、部屋空きましたよ」
尾高・田淵
「じゃ。」
ケイト
「おはようございます。」
尾高
「おう。」
ケイト
「おっと。」
尾高
「こんにちは」
ケイト
「どもっ」
田淵
「おいっす!」
ケイト
「おい~っす」
小野寺
「編集長、今、DNAの乳がんリスクの話してましたけど、最近ではDNA検査で適した職業とか相性のいい結婚相手とか調べるらしいんですよ。」
「DNA調べた上で相性のいい相手を紹介する結婚相談所もあるらしいんで、今日そこのパーティ取材してみようと思ってんです。」
岩谷
「DNAネタはよくあるからなぁ。」
小野寺
「いやでもDNAでマッチングした人を紹介することに特化した結婚相談所って面白くないですか。」
岩谷
「よし、明日の企画会議までにまとめろ。」
小野寺
「明日の企画会議には死者2人を出した悪魔のダイエットクリニックのネタを出すつもり、、、」
岩谷
「じゃあ小野寺は引き続き悪魔のダイエット、DNAはケイトに任せろ。ケイト!」
ケイト
「えっ?」
岩谷
「小野寺からDNA婚活の取材を引き継げ」
ケイト
「私、東阪自動車道の遺族インタビュー、、、」
岩谷
「そっちもこっちもやるんだ。いいな黒川。」
黒川デスク
「はい」
ケイト
「黒川さん本当にいいんですか?」
黒川
「あの人言い出したら聞かへんって。小野寺?」
小野寺
「僕の企画なんだけどな~。」
黒川
「佐藤、お前ケイトのアシ。」
佐藤
「はい。」
<会議室>
小野寺
「唾液からDNAを採取して結婚相談所に登録しておくと相談所がDNA的に相性のいい相手を紹介してくれるんだよ。」
佐藤
「高っ!」
「遺伝子検査費6万円、1回の紹介料3万円、パーティの参加費1万円ですよ!?」
小野寺
「一生の問題だから高いとも言えないだろ。」
ケイト
「遺伝子の相性がいいってどういうことなんですかね。」
小野寺
「HLA遺伝子って免疫遺伝子があるんだけど、その相性がいい者同士が結婚するとすごく免疫力が強い子が生まれるんだって。」
ケイト
「出来のいい子供を作るためですか?」
「それって命の選別的。」
小野寺
「子供のことだけじゃなくてそのHLA遺伝子の相性がいいとなぜかちゃんと惹かれ合うんだって。」
「だから別名恋愛遺伝子とも言うんだよ。」
ケイト
「じゃあ結婚相談所で紹介されなくても直感的に遺伝子の相性のいいもの同士は惹かれ合うんじゃないですか?」
小野寺
「現代はストレス社会だから直感は明らかに鈍ってんだよ。」
ケイト
「そうかなぁ」
「私は小学校の頃から直感的にいいなと思う男子、常にいたけどなぁ。」
小野寺
「それはあなたが特殊なんです。」
「編集部に元カレと今カレがいても平気なんだから。」
ケイト
「それって特殊?」
佐藤
「え?まぁ、、、どっちかがいるならわかりますけど、両方いるのは特殊かもしれません。」
ケイト
「へぇ。。。」
小野寺
「僕なんか恋愛経験もないし結婚もお見合いなのにな~。」
ケイト
「や~だ!恋愛経験ないんですか?」
佐藤
「ははっ・・・」
小野寺
「・・・まぁこれからこういうの需要あると思うんだよね。DNA的に相性のいい相手と巡り合えればフラれるリスクも少ないんだから。」
ケイト
「なるほど。フラれるのはヤダ・・・その気持ちわかります。」
小野寺
「だろ?」
ケイト
「小野寺さん、取材のキモ、わかりました。」
「腹ごしらえして出かけよう!」
佐藤
「はい」
<DNAマッチングパーティ会場>
司会
「それではただ今より、DNAマッチングパーティーを開催いたします。」
「参加者の皆様、どうぞ!」
笹野
「参加者の皆さんは仮面をつけたところに限りお写真大丈夫との事ですので。」
ケイト
「ありがとうございます。」
「顔を隠しているのはなぜですか?」
笹野
「まずはお話のフィーリングを感じていただくためです。」
司会者
「それでは封筒をおあけください。」
ケイト
「あの紙はなんですか?」
笹野
「マッチング率が書かれています。」
司会者
「今、目の前にお座りの方が、精度の高いDNA分析によって選び抜かれたお相手なんですよ!」
「10分が経ちました〜!」
「いかがでしたでしょうか?そろそろ、運命のパートナー候補のお顔が見たい頃ではございませんか?」
ケイト
「マスクを外した途端好みの顔じゃなくてがっかりなんてことないんですか?」
笹野
「相性が良い方だとわかってお顔を見たらそんなに嫌では無いみたいですよ。」
ケイト
《ほんとかよ》
司会
「それではマスクをお外しください!」
ー会場笑いー
ケイト
「洗脳されちゃってますね。」
笹野
「洗脳ではありません科学です。」
佐藤
「フリータイムになっても、DNAでマッチングされた相手と話してますね。」
ケイト
「フリータイムがあるなら普通の結婚相談所と同じような気もしますけど。」
笹野
「ここからがクライマックスです!」
司会
「集計が出たようです。それではマッチング結果を発表いたします。これから先結婚を前提にお付き合いするカップルは…」
「 1番木原さとみ様、1番田中浩紀 様、おめでとうございます。」
「2番天野遥香様、2番曽我部駿様、おめでとうございます。」
「3番吉井真由美様、おめでとうございます。」
「4番、、、おめでとうございます」
「9番おめでとうございます」
「10番染谷あおい様、10番川口慎太様、おめでとうございます」
佐藤
「DNAすご。」
司会者
「今回のカップル成立は、以上となりました。」
不成立の女性
「あの、、、」
笹野
「お気になさらないでください。一度で成功される方が少ないんですよ。」
不成立の参加女性
「でも私だけ…」
笹野
「皆さん何回目かでカップル成立されているんですよ。諦めずにまたチャレンジしてください。」
ー成立カップルにインタビュー取材ー
ケイト
「DNAにかけたのはどういうお気持ちだったんでしょうか?」
成立男性田中
「早めに間違いのない相手と出会えて、その上、別れるリスクも少なくなると言う最も合理的な方法だと思ったからです。」
「気まずく別れたりするときのストレスは計り知れないですからね。」
ケイト
「そうですよね、わかります。」
ケイト
「どういうお気持ちで今日はいらっしゃったんですか?」
成立女性さとみ
「私は気が弱くて、男性とお付き合いしたこともなくて…」
ケイト
《嘘だろ》
成立女性さとみ
「普通のお見合いパーティーだと地味で誰の目にも留まらないなって思ったんです。」
成立男性田中
「そんなことないですよね?」
ケイト
「そんなことないと私も思います。」
3人
ふふふふふ。。。
ケイト
《したたかな女だぞ。騙されんなよ。》
佐藤
「お相手のどんなところに惹かれましたか。」
成立女性あおい
「よくわからないんですけど、いい匂いがしました。」
佐藤
「あー、におい、、、DNAの相性には、臭いも関係あるらしいですからね。」
男性女性
「そうなんですか。」
佐藤
「そうらしいですよ。」
男性女性
「へー」
<編集部>
春樹
「あの、ちょっといいですか。」
岩谷
「おお、いいよ。」
春樹
「すいません、あっちで」
岩谷
「あ〜、ここでいいよ。」
春樹
「あの、ここではちょっと。。。」
<会議室>
春樹
「次の移動のタイミングで、僕を編集部から出していただけないでしょうか。」
岩谷
「どうして。」
春樹
「実は真壁ケイトと別れたんです。」
岩谷
「えー。」
春樹
「いろいろあったので、同じ編集部の中にいるのちょっと精神的に苦しいというか。。。」
岩谷
「フラれちゃったの?」
「なんでダメになっちゃったの?」
春樹
「それは言わないって約束したんで。」
岩谷
「あーそう。」
「理由はどうあれ俺はね、男女問題で異動はさせない主義なんだ。そういうもんじゃないから。仕事って。」
春樹
「はい。」
岩谷
「異動はさせない。野中は大事な戦力だ。」
春樹
「はい、ありがとうございます。」
岩谷
「話って?それだけ?」
「週刊誌の編集部で働くには、過ぎてしまった事は忘れることだ。じゃあそういうことで。」
<パーティー会場外>
ケイト
「DNA調べてあのパーティーに参加してみないと見えてこないな。」
佐藤
「結婚する気もないのにパーティーに参加したらマッチングされた相手に失礼ですよ。」
「それってうちのコードに触れると思いますけど。」
ケイト
「本気で相手を探す気があればいいわけでしょ。」
佐藤
「えー、だって真壁さんには野中くんがいるじゃないですか。」
ケイト
「私これから、横浜理工大学の遺伝学の先生に会ってくるから。」
佐藤
「えー、それいつアポ取ったんすか?」
ケイト
「仕事は常に迅速によ。」
ー不成立男性の山際が事務局員笹野と会場の外で会話ー
佐藤
「・・・。」
「あ、さっきマッチングしなかった人だ。」
ケイト
「(佐藤に)行動確認」
佐藤
「はい。」
<大学研究室>
大学教授
「えー、マウスにピカッと光を当てた後に電流を流します。」
「何度も繰り返すとマウスはぴかっと光る光を見ただけで怯えるようになります。」
ケイト
「それは、パブロフの犬ですね。」
教授
「そうです。ですが先があるんです。」
「驚くべきは、そのマウスの子供も、同じ反応を示すんです。」
「自分は体験していないのに子供のマウスもピカッという光に怯えるんです。」
ケイト
「親の経験が子供に遺伝するってことですか?」
大学教授
「そうです。DNAには性格や風貌だけじゃなく、習慣や経験も組み込まれています。遺伝子の意志こそが命の意思なんです。」
ケイト
「マウスはそうかもしれないけど、人間の場合怯えることないと教えたら大丈夫なんじゃないですか?人間には言葉がありますから。」
大学教授
「DNAの意志の前に言葉なぞ無力なものなのです。」
帰り道
ケイト
《もし、私がのとあの子供なら、のとあのDNAが私の中に生きている。》
《私はマウス、、、》
ー携帯が鳴るー
ケイト
「はい。」
佐藤
「さっきの2人なんですけど、別に何もなく地下鉄で別れました。その後男性の方を追ったんですけど普通に仕事に戻りました。」
ケイト
「何やってる人?」
佐藤
「個人で設計事務所をやってるみたいです。」
ケイト
「そう。ご苦労様。」
「はぁ。。。」
<編集部>
ーケイトが動画を見るー
「殺人の疑いで逮捕されたのはのとあ徹43歳です。」
「キャンプ場無差別殺人の容疑者、のとあ徹を乗せた車が今、奥多摩署に入ってきました。」
「ここが、毒殺事件の起きたキャンプ場です。
見えますでしょうか。あの奥の、ブルーシートの敷かれている炊事場の前です。あそこに置かれたウォータータンクの中に犯人は毒草であるハリヒメソウを入れたと思われます。
その水を飲んだキャンプ参加者は次々と嘔吐しあのあたりに倒れていったとのことです。」
「この事件で2人が死亡、依然5人が意識不明の重体、、、」
ケイト
「はぁ。。。」
ー春樹入ってくるー
春樹
「明日から松島先生、3週間も北欧に旅行なんで。。。」
ケイト
「へえ。。。」
「コーヒー飲む?」
ー春樹冷ややかな目でケイトを見るー
ケイト
「・・・そんな、恐ろしい人見るような目で見ないでよ。」
「私が何したっていうの?私が人殺しだとでも思ってんの?それって差別じゃない?」
春樹
「いや、、、」
ケイト
「そんなふうに思ってたんだ!見損なったよ、野中。」
<帰り道>
尾高
「送っていくよ。」
ケイト
「逆だよ。」
尾高
「これから朝まで歌舞伎町でイエコウモリの撮影なんだ。」
<尾高の車中>
ケイト
「イエコウモリって、昔、尾高さんの家で買ってたあれ?」
尾高
「うん、けどあれ、飼ったらいけないものだったらしい。」
ケイト
「へえ、そうなんだ。・・・一緒に行ってもいい?イエコウモリの撮影。」
尾高
「いいけど、ゴミ臭いよ。」
<撮影現場>
ケイト
「うわっ、くっせー」
ー撮影後ー
ケイト
「昨日犯罪遺伝子について調べたんだ。」
「ママの遺品の中から指輪が出てきて、その送り主を突き止めたら乃十阿徹だったの。」
「30年前キャンプ場で起きた無差別殺人の犯人、乃十阿徹。」
「ママと乃十阿徹が恋人だったとしたら私の父親は乃十阿徹かもしれないでしょ?」
尾高
「キアヌリーブスじゃないの?」
ケイト
「キアヌの可能性もあるけど、乃十阿徹の可能性もあると思うの。」
尾高
「ふーん、じゃあキアヌってことにしとけよ。」
ケイト
「は、、、尾高さん全然驚かないね。」
尾高
「ん?」
ケイト
「普通さ、殺人犯の子かもしれないって聞いたらもっと驚くはずでしょ。」
尾高
「驚いたよ」
ケイト
「うっそ」
尾高
「俺、あんまり顔に出ないんだ。」
ケイト
「うそ、尾高さんなんか知ってる。」
「この前も乃十阿徹について教えて欲しいって言ったらそんな人もいたっけなあって惚けたでしょ?」
「そのこと聞きたくてついてきたの。だからもう逃げられないから。」
尾高
「・・・。」
「ラーメン食う?」
<ラーメン屋>
尾高
「鼻水出てるよ」
ケイト
「ん、、、?」
尾高
「はい。」
ケイト
「ありがと。」
尾高
「3年前、乃十阿徹の出所の写真をイーストのグラビアに掲載したんだ。」
「発売の日の午後、お母さんから連絡があった。ケイトには内緒で会いたいって。」
<回想>
杏南
「尾高君、乃十阿徹を追いかけるのはもうやめてほしいの。」
尾高
「どうしてですか?・・・あ、お知り合いですか?」
杏南
「理由を言わないとお願いは聞いてもらえない?」
尾高
「んー、ま、そう、ですね、、、」
杏南
「その人、ケイトの父親なの。」
尾高
「えっ!?」
杏南
「乃十阿と私は慶英大学の講師と学生だった。再開したときには彼は教授になっていて結婚もしてて子供もいた。」
「なぜもっと早く再会できなかったのかしら。結ばれない運命だったのね。」
「ケイトを授かった時、産もうと思った。証が欲しかったの。」
尾高
「あの事件は?」
杏南
「乃十阿は人を殺すような人間じゃありません。」
「ケイトがいつか乃十阿と私の接点を知るようになるのかと思ったら、耐えられない。。。」
「どうか、もうそっとしておいてください。そしてケイトを生涯守ってあげてください。何もかもあなたが汲んであげて、、、わかるわね。」
ケイトをお願いします。」
<回想おわり>
ケイト
「ママが乃十阿徹が父親だって言ったんだ。。。」
尾高
「うん」
ケイト
「じゃママは何でキアヌの子だなんて言ったの?」
尾高
「・・・。」
「帰ろうか。少しくらい横になった方がいい。今日、企画会議だろ?」
ケイト
「眠れないよこんな気持ちで。」
編集部
ケイト
「DNA婚活パーティーは参加者を洗脳している感じで気持ち悪かったんですけど、この洗脳にも染まらない人がいたんですよ。1組だけ成立しなかったカップルがいて、、、」
佐藤
「あれって多分、女性の方はマッチング相手を指名してるんですよね。男性が選んでないんですよ。」
ケイト
「その男性の心情を取材しないとあの婚活パーティーのヨイショ記事になっちゃうと思うんですよね。」
黒川
「そやな、ほなそのへんのとこ取材してみ。」
ケイト
「はい。今から行ってきます。あ、佐藤くんはいい。2人で行くと圧力かかりすぎちゃうから。設計事務所の住所送っといて。」
佐藤
「分りました。」
小野寺
「DNA婚活、僕のネタだったのになぁ。」
福西
「そうっすね。」
黒川
「小野寺~っ!お前ケイトの先輩やんか。ちっちゃいこと言うな。」
「お前は悪魔のダイエットクリニックで左トップ狙うたらええがな。」
小野寺
「はい。行ってきます。」
<設計事務所>
ケイト
「突然お邪魔してすみません。私、週刊イーストの真壁と申します。」
山際
「はあ…何か?」
ケイト
「昨日のDNA婚活において、山際さんはただ1人DNAマッチングの良いお相手を選ばれませんでした。そのことについてぜひお話を伺いたいと思いまして。」
山際
「すみませんけど、今仕事中ですので勘弁してください。」
ケイト
「笹野さあーん?そこにいらっしゃいますよね。」
山際
「もうなんですか!やめてくださいよ!大声出して。近所迷惑じゃないですか。」
ケイト
「すみません。それでは中に入れていただけますか?」
山際
「はあ?」
ケイト
「笹野さあーん?」
山際
「ちょっと、、、だから…。」
ケイト
「中にいらっしゃいませんか?」
山際
「いませんよ。」
ーガチャ!笹野出てくる。ー
ケイト
「ねっ!」
<設計事務所の中>
笹野
「これってプライバシーの侵害じゃありません?」
ケイト
「お二人はDNAの相性が良いからこうしてお付き合いなさっておられるんですか?」
「それとも山際さんは笹野さんがおられるから昨日のマッチングの良いお相手を選ばれなかったんでしょうか?」
笹野さん
「やめてください。私たちは独身です。不倫にうるさい週刊イーストさんにとやかく言われるような事はありません。」
ケイト
「お付き合いされている方がいるのになぜ山際さんはDNA婚活に参加なさったんでしょうか?」
山際
「自分たちのDNAマッチングは最悪なのです。」
笹野
「そんなこと言わなくていいから。」
山際
「この人がマッチングの良い人を選んだほうがいいとまた言うんで。だけど…。」
ケイト
「やっぱり、笹野さんがお好きなんですね。」
山際
「そうです」
笹野
「ちょっと、、、」
ケイト
「70%以上のマッチング率がないと相性が良いとは言えないと伺いましたが、お二人は70%行かないんでしょうか?」
笹野
「10%もいかないです。」
ケイト
「えー。」
山際
「でも僕は・・・」
ケイト
「僕は?」
山際
「笹野さんが好きなんです。」
ケイト
「そういうもんですよね、恋って。ダメだダメだと思っていながらも、惹かれてしまうのがホントの恋です。」
山際
「6回もマッチングのいい人を紹介してもらいましたが、どの人より事務局の笹野さんが気になってしまって。。。」
笹野
「私たちの事は書かないでくださいね、絶対に。」
ケイト
「誰かわかるようには書きませんので。」
笹野
「誰かわからないようには書くんですか?やめてください、それだけは。私、クビになってしまいますから。」
山際
「そしたらここで働けばいいよ!」
「DNAがなんだ!結婚しよう。10分の1の数字でも自分が10倍努力するから、結婚してください。」
笹野
「それは・・・」
「だって、10%もいかないんだよ私たち。」
ケイト
「笹野さん、DNAの呪縛から抜け出したほうがいいですよ。だって10倍努力するなんて言ってくれる人いないですよ、この世の中に。」
笹野
「口だけなら何とでも言えます。でも、DNAは違うって言ってるんです。」
ケイト
「DNAなんて気にしないなんて言ってくれる人、DNAなんて関係なしにプロポーズしてくれる人、そんな素敵な人、他にいませんって!」
「乗り越えてくださいよ!逆境に負けないでください!」
笹野
「真壁さん、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
ケイト
「DNAがなんだって言う記事を書きたいと思います。」
笹野
「それは困ります!だったら昨日撮った写真の掲載はしないでください。」
「大体、あなたちょっとおかしいですよ。突然ここに乗り込んで・・・」
ケイト
「山際さん、頑張ってください。」
「笹野さんだって山際さんのことを好きです。誰が見たってわかります。」
「DNAなんて関係ないって言ってくれる人、ほんとになかなかいませんから。大事にしてください。良いお話うかがえました。ありがとうございました。」
ーケイト、記事を仕上げるー
<編集部>
黒川ディスク
「ええ記事や。」
ケイト
「どもっ!入稿してきます。」
<発売日・編集部>
愛花
「この記事のカップル、素敵ですよね。科学ではなく直感を信じた感じ。かっこいいですよね。」
春樹
「うん、、、そうだね。」
ケイト
「おはようございます。」
小野寺
「おはよう。面白かったよ。DNA婚活レポ。」
ケイト
「どうも。」
小野寺
「左トップは僕がもらったけど。」
ケイト
「次週は赤城大臣のネタで私が右トップもらいます。」
小野寺
「戦闘的なDNA持ってるね〜。」
黒川
「さっきマッチングスマートから電話でえらい文句言われたわ。うちは洗脳なんかしてません!言うて。」
ケイト
「あー…想定内です。」
黒川
「物事にはいろいろな見方があって当然やと言うといた。」
ケイト
「どもっ」
佐藤
「うわっ、マッチングスマートのホームページ、すごいことになってますよ。殺到してます、予約が。昨日までこんなことなかったのに。」
黒川
「ほんまかいな。。。週刊イーストの宣伝力ものすごいな。」
佐藤
「DNAを信じてもよし、信じなくても良し、っていう記事内容が良かったんですよ。さすが真壁さん。」
ケイト
「やるもんだね〜」
黒川
「うわっ、謙遜せぇへんのや。憎たらしい、、、」
ケイト
「ハハハ。」
<海辺の家>
乃十阿
「・・・。」
子供達
「さよなら〜」
<焼き鳥屋>
岩谷
「あのさぁ…、野中が移動したいと言ってきたんだ。」
ケイト
「そうですか。」
岩谷
「俺はケイトがやりにくかったらあいつを次の異動で出しても良いとは思ってんだけど、君の気持ちはどうなの?」
ケイト
「どっちでもいいです。」
岩谷
「もうどうでもいいんだ。。。」
ケイト
「はい、もうどうでもいいです。」
岩谷
「じゃ、置いとくぞ。」
ケイト
「大丈夫です。」
岩谷
「何食う?」
ケイト
「あ、すみません、モモと、つくねと、砂肝と、せせりと、軟骨カリカリ揚げと、、、はっ!あとよだれ鶏!これ、温かいのと冷たいの、両方ください。」
店員
「はい、かしこまりました。」
ケイト
「人間は性的に満たされなくなると、食欲が亢進するらしいです。」
岩谷
「それはやばいな。」
ケイト
「やばいです。」
岩谷
「太ったケイト、見たくないよ。」
「今さら言うのもなんだけど、やっぱりケイトは尾高が合ってたな。」
ケイト
「尾高さん奥さんいますから。」
岩谷
「いてもいいんじゃないの?」
ケイト
「え〜、、、」
岩谷
「ケイトと尾高なら特例で。」
ケイト
「不倫暴いてる人がそんなこと言っていいんですか?」
岩谷
「ダメだな。」
ケイト
「ダメですね。」
「あっ、すいません、親子丼もください。」
店員
「親子丼、はい、かしこまりました。」
ケイト
「食べます?」
岩谷
「いらない」
<尾高仕事部屋>
ーケイト訪ねてくるー
「忙しい?」
尾高
「ううん。どうした?」
ケイト
「聞きたいことがあって。」
尾高
「どうぞ」
ケイト
「さっきまで岩谷さんと飲んでたの。お酒臭い?」
尾高
「ちょっとね。」
ケイト
「あ、ごめん。」
尾高
「別にいいよ。あ、インスタントしかないけどコーヒー飲む?」
ケイト
「うん。」
ケイト
「前はあったよね、コーヒーメーカー。」
尾高
「今でもあるよ。」
ーコーヒー渡すー
尾高
「はい。」
ケイト
「ありがとう。」
「ママとの約束で乃十阿徹のことずっと黙ってたのに、何でこの前話してくれたの?」
尾高
「苦しそうだったから。」
ケイト
「私が?」
尾高
「うん。」
ケイト
「覚えてる?私にプロポーズしてくれた日のこと。」
「尾高さんがニュースカメラマンやめて、私たちがうまくいかなくなってたころ。」
<回想・編集部>
尾高
「お疲れさん。」
ケイト
「あっ、お疲れ様。」
尾高
「・・・。結婚しないか?」
ケイト
「結婚?動物カメラマンになったら普通の人になったのね。」
尾高
「ニュースカメラマンじゃない尾高さんなんかいらないか。」
ケイト
「うん。」
尾高
「だけど、夫にしたら案外いいかもよ。」
ケイト
「やめて。そういうこと言う尾高さん、好きじゃない。結婚はしない。誰とも。」
<回想おわり>
尾高
「忘れるわけないだろ。ケイトにふられた日だもん。」
ケイト
「あれってなんで?」
尾高
「え?」
ケイト
「結婚とかしないでこのままずっと仲良くやって行けたらいいねって言ってたのに。」
尾高
「なんでプロポーズしたか・・・?」
「それは、、、ケイトを離したくなかったからだよ。」
「呑気に動物を撮ってる尾高さんなんて尾高さんじゃないって言われてショックだった。けど、やっぱり離したくなかったんだな。」
「野中がケイトに興味持ってるのも知ってたし。」
「だけどそんな昔のこと…今更どうした?」
ケイト
「大事なことなの。私が乃十阿徹の子供だってわかってて結婚しようって思ってくれてたってこと?」
尾高
「うん」
<回想>
春樹
「やっぱり結婚は無理かなって思うんだ。ごめんなさい。結婚の話はなかったことにしてください。」
<回想終わり>
ーケイト泣くー
ケイト
《何であの時、気づかなかったんだろう。》
尾高
「何?どうした?」
ケイト
《何でこの人を捨ててハル君に乗り換えたんだろう》
《時間よ、戻れ》