カツオ、ワカメ、タラちゃん。
かつて天真爛漫だった磯野家の子供たちも大人になりました。
カツオは飲食店経営、ワカメはアパレル系のデザイナーで共に磯野家を出て独立しています。
タラちゃんは大学生。就職活動の真っ只中です。
かつてにぎやかだった磯野家も子供たちが成長してなんだか静か。
「たまにはカツオもワカメも帰ってくればいいのにねえ」
サザエさんは夏の盆踊り祭りに家族を招集します。
「磯野家の人々」主な登場人物(キャスト)と近況
サザエさん(天海祐希)
サザエさんは昔と変わらず明るくマイペースです。商店街を歩けば三河屋のサブちゃんをはじめ、八百屋さん、魚屋さん、あちこちから声がかかります。娘のヒトデの学校でも人気者です。
しかし、心配ごとがないわけではありません。
就職活動がうまく行ってない息子、タラちゃんのことをとても気にしています。
「タラちゃん、ちっとも楽しそうじゃないの。」
「そういえばここのとこ、ずっと笑顔見てないなって思ったり。。。」
カツオ(濱田岳)
カツオは大学卒業後、転職を繰り返してきました。
野球選手、出版社、宮大工、漫画家。
ほぼ半年ごとに職を変えてきたものの、今は洋食屋「Skip jack」を経営しています。ちなみにSkip jackとは鰹のことです。
新メニューをあれこれ考えますが、ちょっと方向性がずれてます。
"チキンライスの代わりにイカライスを使ったイカとイカ墨のオムライス"
"オムさんまライス"
"TKGオムライス"
店のことを気にかけて店に来てくれる花沢さんに試食してもらいますが、毎回閉口させてしまいます。
近くにできたショッピングモールの影響で店の経営が思わしくありません。
「向こうにできたショッピングモール。美味しそうなレストラン一杯だよ。」
「わざわざこっち側には来ないよ。」
ワカメ(松岡茉優)
ワカメはアパレル会社に就職して7年。夢だった服のデザインを担当しています。
服のデザインは大好きな仕事ではあるものの、成果の方は今一つ。
「ここに私の服が飾られること、あるのかなぁ。。。」
来年の秋冬のデザインも後輩のデザインに決まってしまいました。先輩社員もどこかばつが悪そうです。
「来年のは決まったみたいよ。あの子のデザインに。」(先輩)
「磯野さん何年目だったっけ?」(先輩)「7年目です!」(ワカメ)
「・・・。そう、頑張って。」(先輩)
そんなワカメは、かねてより付き合っていた貝塚から、海外赴任が決まったタイミングでプロポーズされます。
「ワカメちゃんに一緒についてきてほしい。結婚してください。」(貝塚)
貝塚についていくとなれば仕事は辞めなくてはなりません。
仕事か、結婚か。。。
タラちゃん(成田凌)
タラちゃんは就職活動をしていますが、内定をもらえずに焦っています。
面接ではほかの人と同じような受け答えをし、個性が出せず不採用続き。
何十社も受けて1社も内定をもらえません。
周りを見れば、飲食店を開業したカツオ、子供のころから好きだった服のデザインを仕事にしているワカメ、大学生ながらドローンを使ってビジネス構想を語るイクラちゃん、みんながすごく見えます。
「そもそも僕は何がやりたいんだろう。」(タラオ)
ヒトデちゃん(桜田ひより)
タラちゃんの妹で17歳の女子高生です。原作にも1回しか登場しないレアキャラです。
毎日サザエさんが作るキャラ弁が恥ずかしくて、友達の前ではお弁当箱を開けられません。手を付けずにまんま持って帰るようになります。
マスオさん(西島秀俊)
気分次第で言うことがコロコロ変わる上司と、気遣いのできない新人との板挟みでストレスを抱えています。
「最近毎日"もう仕事やめよっかなぁ"なんて思っちゃうんだよねぇ」
「僕もカツオくんみたいに店でもできたらなぁ」
浪平とフネ(伊武雅刀・市毛良枝)
浪平は定年退職し、二人静かに暮らしています。
盆踊り祭りにサザエさんが一家招集
磯野家にとっても思い出深い盆踊り祭りに、サザエさんがみんなを招集します。
「盆踊りのため全員集合!」
既に独立して家を出ているカツオとワカメもやってくることになり、浪平とフネは楽しそう。
「じゃあ私、買い物でも行ってこようかしら。だってみんな、お腹すかせて帰ってくるでしょ?何が食べたいかしら」(フネ)
「母さんの作るものならみんな何でも喜ぶわよ」(サザエ)
「母さん、あれも買ってきてくれ。花火だよ、花火。」(浪平)
久しぶりに楽しそうにする浪平とフネを見て、サザエさんも嬉しそうです。
しかし、久しぶりに勢ぞろいした磯野ファミリーも、なかなか昔のようにワイワイガヤガヤとはいかないのでした・・・
磯野家に全員集合!しかし、、、
盆踊り当日。みんなの期待に反して、雨が降ってお祭りは中止に。盆踊り会場では、中止のアナウンスが流れます。
「あさひが丘商店街祭りは悪天候のため中止いたします。」
引退花火だと張り切っていた花火師の平さんも寂しそうに雨を眺めるしかありません。
磯野家では夕食の準備が着々と進んでおり、フネの作るサバ味噌をカツオが懐かしそうにのぞき込みます。
「あ、母さんの作るサバ味噌、懐かしい!」(カツオ)
「お腹すいたー!」(ヒトデ)
まだ全員そろってないものの、ヒトデの一言で夕食を始めることに。
「お弁当食べないからお腹すくのよ」
お弁当に手を付けないヒトデにサザエさんがチクリと注意します。
「あんなお弁当恥ずかしい」と返すヒトデ。17なんだからキャラ弁は嫌だと主張しますが、サザエさんもあんなお弁当作るママはいないでしょと応じ、話は平行線です。
今度は食事が始まっても食事に手を付けないタラちゃんにフネが心配して声をかけます。
「どうしたのタラちゃん、食べないの?」(フネ)
「何か食べてきたの?」(サザエ)
「どこか具合でも悪いのか?」(浪平)
タラちゃんは何かを言おうとしますが、その瞬間カツオが遮ります。
「わかった!就活だ!」(カツオ)
「明日面接なんだろ。それで緊張してるんだ?」(カツオ)「何十社も受けてるのに?」(ヒトデ)
何十社も受けていると聞き驚くカツオですが、すかさずサザエさんと浪平がフォローします。
「就活ってそういうものなのよ。」(サザエ)
「まともに就活なんぞしたことないお前にはわからんかもしれんが、大変なんだ。」(浪平)
話題はカツオのレストランに移ります。
「大体お客さん来てるの?」(サザエ)
「姉さんね、あの商店街自体、人が減ってんだから期待しちゃだめだよ。」(カツオ)
カツオも何か言いたげですが、「えー、、、」としゃべりだした瞬間、ワカメが雨でずぶぬれになって帰ってきてタイミングを逃がしてしまいます。
一方、マスオさんは同僚にして親友のアナゴに誘われてと居酒屋で一杯飲んでいました。
居酒屋のテレビでは台風22号の直撃を伝えるニュースがずっと流れています。
マスオさんは新人の扱いに悩んでいます。
「参ったよ。でも今は強く言えないしね。気を使うよ。」(マスオ)
新人だけではありません。マスオさんはいい加減な上司にいつも振り回されています。
「上も下も、フグ田君はついてないなぁ」(アナゴ)
「最近毎日、もう仕事やめようかなぁなんて思っちゃうんだよね。。。」(マスオ)
マスオさん、実はカツオのことを尊敬していました。
職を転々として洋食屋を開くと宣言した時は浪平もサザエさんも大反対でしたが、そこでひるまず自分の思いを押し切って開業し切り盛りしている。
「カツオくんはかっこいいからね。」(マスオ)
「きっと、自分の一番やりたいことを見つけたんだよ。」(マスオ)
「僕は男としてカツオくんを尊敬しているんだ。」(マスオ)
磯野家ではワカメが重大宣言していました。
「結婚します!」(ワカメ)
去年から貝塚と付き合っていることを知っていたフネ以外は大きく驚きます。特に父である浪平はショックが隠せません。
「ちょちょ、、、ちょっと待ちなさい」(浪平)
2つ年上の営業マンである貝塚の海外赴任に合わせて結婚し、海外についていくつもりだといいます。
しかし、、、
仕事はどうするのかとのサザエさんの問いに、ワカメの答えはどこかネガティブ。
「なんかもう自分の力はわかったっていうか・・・」(ワカメ)
「タラちゃんも就活してるなら自分の能力を活かせるところを良く選んだ方がいいよ。」(ワカメ)
どうも手放しに喜んでいいのか微妙な雰囲気です。
ワカメからアドバイスされたタラちゃんは今後は応募先を広げると宣言。
「前は広告系ばっかり受けてたけど、ITとか食品系とかいろいろ受けてみるからどっかいけると思う。」(タラオ)
とにかく手あたり次第だという雰囲気のタラちゃんの言葉を聞いてカツオもようやく衝撃の宣言をします。
「じゃあ僕も適当に探してみるか」(カツオ)
「僕、レストラン辞めるから。」(カツオ)「えーっ!!!」(みんな)
客もこず、家賃も2か月滞納しているし、飽きてきたからもうやめるというカツオ。浪平は怒りを隠せません。
「そんなもんなのか!!あんなにやるって言い張ってたのに、お前はその程度だったのか!」(浪平)
職を半年ごとに転々としていたカツオが、浪平やサザエの大反対を押し切ってようやく開業した店。まだ7か月しか経ってません。しかも次の仕事の目途も立ってない状況です。
店をやめるというカツオ、仕事をやめて結婚するというワカメ、そしてとにかくどこでもいいから就活してみるというタラちゃん。
サザエさんはある提案をします。
「大体そうやってグダグダ言うってことはねぇ、やめたくないのよ。」(サザエ)
「わかった!こうしましょう。カツオとワカメは仕事を辞めない。タラちゃんは就活やめなさい。」(サザエ)
ちょっと待ってよと驚く3人。もちろん全く納得せずにサザエさんと3人は押し問答になります。
久しぶりにみんな揃っての食事を楽しみにしていた浪平は、最初こそ場を取り繕うように優しく声をかけていたものの、いつまで経っても押し問答が終わらないのでついに雷を落とします。
「いい加減にしないかっ!!!!
お前たちはどうして、こうやって母さんが用意してくれた料理を楽しく一緒に食べることができないんだっ!」(浪平)
すると、、、
浪平が怒鳴ったのと同じタイミングで爆音がとどろきます。庭先に雷が落ちたのでした。
何十年も前、サザエさんが子供の頃に「サザエと我が家を守ってくれる」と言って浪平が植えた庭木が雷の直撃を受けたらしく、折れてしまっていました。一同呆然です。
その日の夜。
カツオもワカメも磯野家に泊まりました。
ワカメはフネと一緒に寝ています。
フネはおもむろに浪平が押し入れから見つけてきた絵をワカメに手渡しました。この絵はワカメが子供の頃に書いた洋服を着た女の子の絵です。
「素敵な服ね。」(フネ)
「久しぶりににぎやかだった」と満足げなフネに、ワカメは手をつなぎたいとせがみ、「あったかーい!」と喜ぶのでした。
ヒトデはタラちゃんと一緒に寝ています。
「おじいちゃん、悲しそうだったね。あの木倒れちゃって。」(ヒトデ)
「ママはさ、お兄ちゃんが楽しいのが一番なんだよ。」(ヒトデ)
2人とも、思うところがいろいろあるような表情を浮かべます。
サザエさんはマスオと寝ています。
「私、余計なこと言ったかしら」(サザエ)
「私ね、あの子たちには毎晩寝る前に思って欲しいの。あー、今日も楽しかったなぁって。」(サザエ)
浪平はカツオと寝ています。
「実はな、遠慮しておったんだ。本当は食べてみたい。お前の店の料理。」(浪平)
「・・・」(カツオ)
翌朝。
磯野家の面々はそれぞれ何か気持ちが整理できたような顔つきをしていました。
フネからもらった子供の頃に書いた絵を笑顔で持ち帰るワカメ、お弁当を受け取るヒトデ、カツオはフネから味噌をもらって何やら思案顔です。
タラちゃんはマスオさんから背中を後押しするような言葉をかけてもらいます。
「タラちゃん、お父さんまだまだ頑張るよ。一年や二年、どうってことないさ。」(マスオ)
盆踊り会場。
台風22号の被害は甚大でした。
"あさひが丘盆踊り大会"と書かれた看板も、櫓や屋台も倒壊しています。
実行委員会の面々は実施をあきらめムードですが、サザエさんやタラちゃんは「ヒラさん最後の花火だけでも見たい。」と開催を懇願。そこに露天商の面々も後押ししてくれてなんとか実施にこぎつけます。
ワカメは貝塚さんにデッサンを見せ、プロポーズを断ります。
「子供の頃に書いたんです。私、やっぱり諦められない。私の作った服をみんなに着てほしいんです。」(ワカメ)
「だから、今は行けません。。。」(ワカメ)
タラちゃんは就活の面接で、初めて自分の正直な思いを語ります。
「正直言って僕やりたいことがわからないんです。だから焦ってばっかりだし。
自分のことをダメな人間なんだって思ったりしてました。
でもやりたいことって立派な事でなくていいんですよね。誰かのために料理を作りたいとか、小さいころから自分の好きだったことを続けたいとか、そういうことでいいんだなって。だから僕も見つけられると思います。なので、今はまだわかりません。」(タラオ)
ヒトデは学校でサザエさんのキャラ弁が友達の間で評判となっていました。
バカにされるのかと思いきや、みんな「可愛い」を連発してヒトデを取り囲みます。ヒトデもまんざらでもない様子です。
カツオはフネからもらった味噌を使い、新たなオムライスを考案します。
早速花沢さんに食べてみてもらったところ、「おいしい!」と好評価。店の閉店はとりやめにし、続けることを決意します。
夜。
サザエさんは家族を土手に連れていきます。ドローンを持ったイクラちゃんもやってきました。
ノリスケに妙子、ヒトデの友達、かおりちゃんに早川さん、アナゴ、商店街の人々、みんなが見ている前で、平さん最後の花火が上がり始めます。
「やっぱり平さんの花火、すごいわね。」(サザエ)
「平さんただものじゃないな。」(カツオ)「いいもんですねお父さん。花火買う必要ありませんでしたね。」(フネ)
「またとっておくさ。」(浪平)
後日、磯野家では一同揃って新たな木の苗を植え、ノリスケ撮影で記念の家族写真を撮ります。
「こんなのが木になるの?」(ヒトデ)
「ん~、でも木らしくなるのはヒトデが僕たちの歳くらいになるころじゃないかな。」(マスオ)
さらに後日。
タラちゃんはやりたいことを探しにニュージーランドへ旅立ちました。
ヒトデは自らお弁当を受け取って学校へ行き、
マスオとワカメは会社へ出勤し、
カツオはせかされて店へ行き、
磯野家はまたサザエと浪平とフネの3人に。
3人は小さな木を眺めながらこの木が大きくなる将来に思いを馳せます。
浪平が年齢的にそこまではどうかなといった寂し気な表情を浮かべると、サザエさんが
「2人とも!まだまだ頑張ってよ!」(サザエ)
とはっぱをかけるのでした。
そして、磯野家の隣人、伊佐坂先生は最後の原稿を書き上げます。
"家の庭にある木は、まだ小さい。"
その後、、、
ヒトデのキャラ弁はすっかり学校で人気となり、
カツオの店には客が訪れ、
ワカメのデッサンは先輩の眼鏡にかなうようになり、
タラオはニュージーランドの羊牧場で働き、
伊佐坂が書き上げた最後の作品「磯野家の人々」が書店に並んだのでした。
おわり。
名言・名シーン・しみるセリフ
「大体、僕はいくらちゃんとは違うんだ。みんなと違うことをしてうまくいくタイプじゃない。みんなと同じようにして生きなきゃ絶対失敗するんだよ。」(タラオ)
「そりゃタラちゃんはイクラちゃんとは違うわよ。でもみんなと同じでもない。タラちゃんはタラちゃんよ。だから就活やめたって大丈夫。」(サザエ)
「だって、私はやりたいからやってるんだもの。
知ってる?キャラ弁って最低2時間はかかるの。でもその間、ヒトデは今日どんな顔するかなぁとか、誰とどんな話して食べるのかなとか、喜んで笑ってくれるかなとか、とにかく、ヒトデのことばっかり考えてるの。そんな楽しい時間、私は止めない。」(サザエ)
「自分に嘘ついたって何にもいいことないのよ。」(サザエ)
「私ね、あの子たちには毎晩寝る前に思って欲しいの。あー、今日も楽しかったなぁって。」(サザエ)
「タラちゃん、お父さんまだまだ頑張るよ。一年や二年、どうってことないさ。」(マスオ)
「磯野家の人々~20年後のサザエさん~」感想
どことなくわびさびというか、郷愁というか、さみしさと恋しさ、新たな希望といった感情がいろいろと押し寄せてくるドラマでした。
磯野家はサザエさんたちが同居しているので一般的な家族像とは少し違うかもしれませんが、それでもアニメのにぎやかだったころと比べると、かなりひっそりとした印象になっており、そのあたりにさみしさを感じた人も多いのではないでしょうか。
特に、余生モードの浪平さんやフネさんが、一家全員そろうとなると昔を懐かしんでテンションを上げる姿は、将来の自分や親のことを投影せずにはいられませんでした。
ツイッターなどを見てもそのあたり「暗い」とか「悲しい」とかいった書き込みもありました。
しかし。
そうはいってもそこは磯野家。
ひっそりとしてるだけではなく、サザエさんは明るくておせっかいだし、カツオはマイペースで言い訳がましいし、浪平さんの雷も健在。
歳月の流れに逆らうことはできないけども、流れ行く時の中で少しずつ、一歩ずつ希望を見出して前進していく、、、最後はそんな感じで勇気ももらえたような気がします。
正直、アニメの実写版、特にコメディ系の実写版は見てる側が恥ずかしくなるようなものも多いですが、このドラマはきちんと独自のメッセージ性を持っているため、当初心配していた違和感はほとんど感じませんでした。
それぞれの役者さんもそれとなくキャラに寄せた演技をしつつ、役者さんの個性も出ていて、すんなりと受け入れることができたのが大きかったと思います。
松岡茉優さん演じるワカメ、可愛かったですね~。